経産省、国内企業のタンデム型太陽電池の開発を支援

経済産業省は、7月23日に開催した有識者会議(グリーン電力の普及促進等分野ワーキンググループ)において、国内企業が取り組むタンデム型ペロブスカイト太陽電池の研究開発、普及に向けた支援策を示した。

 タンデム型ペロブスカイト太陽電池は、再生可能エネルギー導入拡大の観点から、単位面積あたりの発電量を大きく増加させる重要技術として、開発・普及を強力に進めていく必要があり、これまで新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発でも支援してきた。

 国内企業は、ペロブスカイト/結晶シリコンのタンデム型太陽電池では、カネカが変換効率32.5%を記録したほか、長州産業(変換効率24%)、東芝エネルギーシステムズと京セラ(31.3%)、エネコート(30.4%)が研究開発に取り組んでいる。また、ペロブスカイト/カルコパイライト(フィルム型)ではPXP(26.5%)、ペロブスカイト/ペロブスカイト(ガラス型)ではパナソニック(21.7%)が研究開発を進めている。

 多くの企業が開発に取り組むペロブスカイト/シリコンは、トップセルであるペロブスカイトが全体の発電量の6割強を決定している。また、製品競争力は製造プロセスなどのノウハウによる部分が大きく、タンデム化が現在の太陽電池産業の競争環境に変化をもたらすゲームチェンジャーとなると見込んでいる。

 一方で、解決すべき技術的課題として、トップセルであるペロブスカイト層の性能向上、積層させるボトムセルの表面加工、最適な塗布技術、大面積での製造プロセス技術の確立(大面積化に伴う性能低下が顕著)、耐久性や信頼性の向上(大半の試験モジュールが半年以内に初期出力の80%まで劣化)を挙げる。また、シリコンに依存しないボトムセルについても開発を進め、経済性を考慮しながらもペロブスカイトのトップセルと適切な組み合わせを検討する必要があると指摘する。

 タンデム型ペロブスカイト太陽電池は、国内外で研究開発が活発化しており、早期実用化を進めることが重要になる。既設設備のリプレースなどが期待され市場規模が巨大である一方、海外企業との競争激化が見込まれ、量産化に向けた研究開発の遅れは市場参入への遅れを意味する。

 短期的には、シリコンを部素材の一つに捉え、国内企業の表面加工技術や成膜技術を活用し、技術成熟度(TRL)の比較的高いペロブスカイト/シリコン太陽電池の普及を先行させる。日本企業の強みを生かし、まずは高耐久・高効率の付加価値が評価されやすい住宅用の市場展開を優先的に進めることで、国内外の需要を確保して競争力強化を目指す。

 中長期的には、大規模な設置向けの事業展開を目指す。ボトムセルにシリコン以外の材料(カルコパイライトやペロブスカイトなど)を用いたタンデム型は、TRLや経済性の向上が伴えばNEDOグリーンイノベーション基金(GI基金)で支援することを想定し、GI基金ではボトムセルの部素材は限定しない。

 研究開発支援策として、今年度から「次世代型タンデム太陽電池量産技術開発実証事業」を追加する。同事業では、製造技術の確立、製品化を想定した最終プロトタイプ開発、実証試験に取り組む。また「次世代型太陽電池基盤技術開発事業」においても、量産に資するタンデム化技術の開発を追加し、これまでの取り組みと連携して普及を目指す。

 研究開発目標として変換効率は、シリコン太陽電池では到達できない水準の30%超を1m2以上の実用モジュールサイズで達成する。耐久性は、シリコン太陽電池と同水準の20年相当を目指す。住宅用発電コストの技術目標としては、2030年までに現在のシリコン太陽電池よりも低い価格競争力を持つ12円/kWh以下を示した。

 具体的には、ペロブスカイト層の成膜品質に係るボトムセルの表面加工について、国内企業が強みとする化学添加剤を用いた高度な微細加工技術を活用し、均一性膜技術の開発を進めて高性能大型モジュールの製造技術確立を目指す。また、産業技術総合研究所・大学などと国内企業が連携して耐久性に優れたモジュール開発を進める、高タクト・高歩留まり率を実現する生産プロセスの開発を国内で早期に進めるとしている。